
近年エンジニア界隈から、「COBOLはやめとけ!」という言葉をよく耳にするようになりました。
メインフレーム上で使用されることが多いCOBOLですが、本当にやめとけ!といわれるような言語なのでしょうか。
実は、技術者不足が深刻化しており、COBOLに対する需要が高まっているということは、あまり知られていないかもしれません。
本記事では、現役COBOLエンジニア目線で、COBOLはやめとけ!は本当なのかについて調査していきます。
加えて、技術者不足の現状と意外な需要についてもご紹介していきます。
・COBOLは本当に「やめとけ」なのか
・COBOL市場の現状について
・COBOLエンジニアの市場価値
COBOLは本当に「やめとけ」なのか?誤解と現実
近年、COBOLは「やめとけ」という声を耳にする機会が増えてきています。
しかし、本当に「やめとけ」と言われるような言語なのでしょうか。
この章では、COBOLが本当にやめておいた方がいい言語なのか、について考えていきます。
COBOLは「やめとけ」と言われる理由とは?
まず、なぜCOBOLは「やめとけ」と言われているのでしょうか?
その理由は下記の二つが挙げられます。
- オープン系言語の登場による市場規模の縮小
- 学習難易度が高い
まず一つ目に、オープン系言語の登場による市場規模の縮小が挙げられます。
日本では1963年からCOBOLが使用されていますが、2000年代から急激にJavaやPythonなどのオープン系の言語が普及し始めました。
その影響で、それまで圧倒的な使用率だったCOBOLの市場規模は縮小傾向となっていきました。
オープン系言語がさらに拡大していくことは確実なので、COBOLは「やめとけ」といった意見につながっているようです。
二つ目に、学習難易度が高いことが挙げられます。
COBOL言語自体は英語を主体としており、わかりやすい言語なのですが、教えるエンジニア自体が不足してきていることが大きな問題になっています。
独学で学ぼうとしても、教材も少なく、あっても古くてあまりわかりやすい教材はなかったりします。(COBOLの新しい教材は販売されることはほぼないです)
こういった総合的なことから、学習難易度が上がってしまっているのです。
古い言語は不要ではない?COBOLが生き残る理由
上記でも述べたように、COBOLは1963年から使用されており、かなり古い言語になります。
しかし、古いからといって「やめとけ」にはならない場合も存在しています。
オープン系言語の登場により、市場規模縮小はしていますが、COBOLを使用して現在も稼働中のシステムもあります。
つまり、古い=不要ではなく、古くても強みがあり、特定の業界では求められているということになります。
その強みとは、演算能力の高さやシステムの安定性が挙げられます。
COBOLは、桁数の多い計算でも難なくクリアできる性能を持っており、金融系など正確な計算を求められる業界では重宝されています。
また、稼働期間が非常に長いシステムが多いので、安定性、保守性もかなりの高水準となっています。
このように、古いからと言って必ずしも不要というわけではないのです。
IT業界でのCOBOLの位置づけと現場のリアル
IT業界での位置づけとして、実は使用率が高いという事実があります。
日経新聞が2024年に実施したあるアンケートで、使用言語ランキングで4位にランクインしていたほどに使用率は高いのです。(1990年代から考えれば、市場規模はかなり縮小しています。)
使用率は高いですが、現代の若い世代のエンジニアで、あえてCOBOLを選択する方は少ないと思います。
新人が少なく、ベテランは引退していく。にもかかわらず需要は引き続きあるので、COBOLエンジニア不足が非常に深刻化しているのです。
深刻なCOBOL技術者不足!現場で何が起きているのか
上記のように、COBOLを扱っているシステム開発現場では、深刻な人材不足が問題視されています。
実際の現場でも、高齢化が非常に大きな問題となっています。(私もCOBOLを扱う現場にいますが、私以外親世代です。)
こういった環境が続いていくと、さらに若いエンジニアが参入しにくくなってくるという、悪循環になっているのです。
しかし、逆に言えば、COBOLを知っているということが希少性に代わるとも言えます。
若くしてCOBOLを扱えるエンジニアが、重宝されている現場も実際に存在しているのです。
意外と稼げる!COBOLエンジニアの年収と市場価値
COBOLエンジニアはやめとけ!と言われることもありますが、実際の年収や市場価値はどうなのでしょうか?
この章では、意外と知られていない、COBOLエンジニアの年収と市場価値についてご紹介していきます。

COBOLエンジニアの求人動向と報酬の実態
COBOLは需要がないと思われがちですが、実際はかなり求人があります。
大手求人サイト複数社で「COBOL」を検索しても、1000件以上の求人は常に掲載されています。
また、直接的な募集ではなく、大手IT企業でも、COBOLエンジニアの求人を行っている場合があります。
特に金融業界システムを扱っている大手企業では、どのタイミングでも、レガシーシステム開発経験のあるエンジニアの募集がかかっていることが多いです。
このように、実際には求人自体はかなり存在しているのです。
次に報酬についてですが、こちらも500万円~1000万円を超える募集も見受けられました。
近年では、COBOLから多言語へのマイグレーション案件が多数あり、そういった求人はかなり高収入の募集条件となっています。
COBOLの将来性については、下記記事で詳しくご紹介しているので是非ご覧ください。

他のプログラミング言語と比較したCOBOLの市場価値
COBOLについての求人や報酬については、ある程度把握できましたが、他の言語と比較するとどうでしょうか。
全体の比較を見てみましょう。
言語 | 求人サイト | 求人数 | 報酬相場 | 需要傾向 |
---|---|---|---|---|
COBOL | doda | 約1,200件 | 月収50〜100万円 年収600~1200万円 | 減少傾向だが、特定分野で安定した需要 |
求人ボックス | 約1,900件 | |||
マイナビ転職 | 約1,300件 | |||
Java | doda | 約16,000件 | 月収30〜100万円 年収400~1500万円 | 安定した高い需要 |
求人ボックス | 約14,500件 | |||
マイナビ転職 | 約13,000件 | |||
Python | doda | 約9,400件 | 月収30〜80万円 年収400~1500万円 | 増加傾向 |
求人ボックス | 約10,000件 | |||
マイナビ転職 | 約8,000件 |
2025年現在では、上記表のとおりでした。
やはり、COBOLは案件数がオープン系言語と比較しても少ないですね。
しかし、どの求人でも1000件以上の募集がかかっており、根強く需要があることがわかります。
また、報酬に関してはCOBOLの案件は比較的高単価に設定されていました。
これは、COBOLエンジニアの希少性が上がってきていることが、主な原因と考えられます。
近年活発化しているマイグレーション案件の関係もあり、今後さらに報酬が上がる可能性もあります。
しかし、オープン系言語の需要はさらに高いですし、報酬上限も高めに設定されている企業が多かったので、今後のIT業界で活躍していくためには、COBOLに加えて複数言語の習得は必須になってくるでしょう。

まとめ
本記事では、COBOLはやめとけ!は本当なのかについて、技術者不足の現状と意外な需要についてご紹介してきました。
市場規模は、全盛期に比べればかなり縮小してきているものの、実際には、COBOL需要はあることがわかりました。
今後も引き続き最低限の需要は続いていくでしょう。さらに、COBOLからオープン系言語へのマイグレーション案件が活発化することで、需要はさらに上がっていくことも考えられます。
結論としては、COBOLはやめとけ!と言われるほどではないような需要はしっかりと存在しており、将来職を失うようなこともないでしょう。
しかし、オープン系言語との案件数の違いや、IT業界全体の進化を考えると、他言語を習得することも必須になってくるのは間違いないでしょう。
